北欧雑貨ファンに人気のフラワーベース、「フローラ」で紐解く”価値の伝え方”

雨の音で目が覚めた今朝。
目を閉じたまま、しばらく雨の音を聞く。
私の暮らしの中で「静寂」は貴重。
リビングに挿したニゲラの写真は、静けさを切り取ったみたいな空気感が好き。
… 何かに惹かれるとき、その気持ちはどこから来るんだろう。
なぜ、他ではなく「それ」を選ぶのか。
世の中には、熱狂的なファンを生み出すプロダクトというものが存在します。
そんなプロダクトには、低価格の類似品が数多く出回るというのもまたよくある話ではあるけれど、そんな中でもなぜ人々は、低価格で同じ目的を無難にこなしてくれる類似品ではなく、「それ」を選ぶのでしょうか。
今回は北欧雑貨から熱狂的な支持を集めるホルムガード社の「フローラ」から、そのヒントを探ってみたいと思います。

デンマークで 1825 年に創業した、伝統と歴史ある デンマーク王室御用達ブランド、 HOLMEGAARD(ホルムガード)。
熟練した商品がひとつひとつ手作業で吹きあげる質の高いプロダクトは 、世界中の美術館にも所蔵されています。
日本でも北欧雑貨ファンを中心に愛用者は多く、なかでも人気があるのは「フローラ」と名付けられたフラワーベース。
機能美と造形美を兼ね備えた、至ってシンプルだけどどこか個性的なフォルムは、不思議とどんな花にも空間にも馴染みます。
私も大好きで、日々の暮らしに欠かせないもののひとつとして愛用しているものですが、似たようなデザインのフラワーベースが他社でも作られていても、やっぱりホルムガードが作り出すこの世界観には及ばない、と感じています。
「フローラ」は他の類似品では得られない、確かな満足感を私に与えてくれるもの。
だから私は他ではなく「これ」を選ぶのです。

その価値は、どこにあるのか。
では、私にとって「フローラ」からは得ることができるけれど、他の類似品からは得られない「価値」がどこにあるのか、ということを考えてみたいと思います。
職人でもある私にとって「熟練の職人が手仕事で生み出すもの」という部分に、ものすごく価値があるんです。
機械製のモノの価値は手仕事でうみだされるモノに劣るとか、そういうことではなくて、ただ、その工程を経て、生み出されたものが好きなんです。
作り手が熟練の職人になるために積み重ねてきた日々の重み、モノづくりへの愛情と誇り、そういった「想い」ごと自分の日々に持ち込むことができる気がする。
そして、ホルムガード社の歴史と伝統。彼らが質の良いガラスウェアを生み出すために重ねてきた日々の価値。
近年名だたるデザイナーとのコラボレーションによって、 自由な発想で新たなプロダクトを生み出し続けている、伝統に甘んじない 常に進化を求める姿勢に見出す価値。
その姿勢に応えるべく、ホルムガードの世界観を保ちつつもどこか現代的で個性的なデザインを産み出したデザイナーの想い。
それぞれの中に存在したであろう、様々なストーリー。
そんな中で生み出された小さなひとつのフラワーベースには、それだけの価値が詰まっているんです。
え?大げさ?
…そうかもしれない(笑
でもね、モノやサービスには本来そういった多くの想いやストーリーが付随していて、それらすべてを含めてそのものの価値なんだと私は思っています。
受け取る側の立場なら、その価値を受け取ることが、日々の暮らしをより豊かに幸せにしてくれる。
その一方で、うみだす側の立場としては、そこにあるすべての価値を、丁寧に受け取ってくれる誰かに届けたいと願うのです。
伝えなければ、伝わらない。
で、ここからが大切な話です。
大型ショップサイトでもこのフラワーベースが販売されているけれど
その魅力はまったくもって伝わってきません。
証明写真みたいな商品写真とサイズ表記赤文字で書かれた価格とオフ率。
それだけ見ても、まったく心は踊らない。同じものとは思えないほどです。
フローラみたいに熱狂的なファンがいて、勝手にあちこちでその魅力を誰かに伝えてくれるほど知名度も人気も高い商品を、他より安価で多く売ることが目的ならば、それはそれで良いけれど。
私がこの商品を見つけたのはインスタでした。
随分前のことなので記憶が定かではありませんが、誰かがアップしていた何気ない暮らしの写真に映り込んでいたような気がします。
自分の毎日に、このフラワーベースがあったら。
そんなイメージが膨らんで調べてみたらウェブ上には、美しい写真とともに、その魅力について語る記事がたくさんありました。
ブランドの理念や歴史、プロダクトの製法やデザイナーについて。
それらを知って、ますます惹かれていきました。
結果、私はこうしてフローラを手にしています。
日々その美しさに魅了され、同じものをいくつか並べた風景も素敵だな、いや、でも次は大きいサイズを買おうかな…と考えていたりします。
価値や魅力は、伝えなければ伝わらないんです。
もっと言えば、語りたくなるようなストーリーをもつ商品やサービスをうみだし、価値を伝え、ブランドを育て、そこに魅了されたファンが熱量をもって語ってくれるという状況を創り出すことができたら理想的ですよね。