SNS発信をビジネスに役立てる表現哲学

今日は少し、お客様からのご質問をベースに私のSNS発信哲学をお話したいなと思います。
「形のない商品を扱っている人はどんな写真を投稿したらいいの?」というご質問、そして「どんなに発信を続けても反応がありません」という2つの質問をご用意しました。
誰もが一度は考える、Instagram のちょっとしたお困りごとを解決しながら、これからの日本の未来に必要なSNSブランディングを考えます。
質問1:無形商品をインスタグラムでどう発信したらいいですか?
モノや料理、建築物など、形のあるものであれば写真に映し、Instagram へ投稿することができます。
しかし、エクササイズやカウンセリングというような「目に見えない」商品、いわゆる無形サービスを扱う人はどのような発信ができるでしょうか?
私は、「ライフスタイルの提案」をお勧めしています。
- どんな世界に連れていってくれるの?
- どんな暮らしの日々を送れるようになるの?
- それって穏やかで温かい日々?
- それともパワフルでエネルギッシュな日々?
企業の打つイメージ広告でよく見かける「存在しないAさん」を演出した世界観ではなく、そのサービスを提供する「あなた」の在り方と一致した世界観。
それが表現できると、扱っている商品やサービスにも説得力が生まれます。

●もしあなたがセラピストだったら
Instagram の投稿を見ていると、文字だけで構成された発信を見かけるようになりました。
複数枚投稿の機能を利用して、「文字の紙芝居」のように表現するやり方など様々に工夫されています。
ただ私がその中でひとつ違和感を覚えるのは、セールスのニュアンスが強すぎる投稿です。売り込み色が強いと、「自分のために売りたい人」という印象を受けるのは私だけでしょうか?
セラピストさんのお仕事は、相手に寄り添い、癒しや心地よさなどを提供するお仕事だと私は理解しています。
そんなご職業の方が、たくさんの煽るような文字投稿を並べたて、セールス色を強く出していたら…。私だったらちょっと遠慮してしまいます。
●もしあなたがコンサルタントだったら
私はInstagram を使った写真表現を通して、「自分らしさ」や「自分の世界観」を視覚的に伝えることができたら、それは本当に素晴らしいことだと思います。
しかもそれが、誰かの理屈ナシの「好き!」や「素敵!」という感情に結びついたとしたら、お仕事をする上でも非常に良い流れが作れるはずです。
例えばあなたが、ビジネス系のコンサルタントだったとします。
もし「結果」や「成果」だけを謳った表現でお客様の興味をひいたのであれば、当然「売上へのコミットメント」を求める人を引き寄せます。
つまりコンサルタント側は、お約束した結果を<必ず>出さなければいけないし、「結果」や「成果」がすべて、という意識をあなた自身の発信によって植え付けられている状態のお客様との関係は、双方にとって幸せなのでしょうか。
この世界で、本当に100%保障できるものなどないはずです。
●新時代のブランディング予測

セールス、マーケティング。これまでのブランディングというのは、どこか「売り込み色」とセットにして語られることが多かったように思えます。
うわべの見え方を演出して、良さそうなものに見せることがブランディング?
でもこれからはそうではなく、あなたと同じ価値観で、あなたの感性に響く人たちと豊かさを循環させるような関係が、SNSを中心とした発信によって生まれてくる。
それって理想的ですし、お互いに気持ちよくお仕事ができるような、そんな気がしませんか?
私は今この世界が、そういう流れへと大きくシフトしているように感じているのです。
SNS発信やブランディングの本質的な目的は、「繋がりを作ること」にあります。その中でも重要なのは「どんな繋がりを作りたいのか?」ということ。
人はあなたの投稿を見て、あなたやあなたの事業の印象を決めます。
時代はますます、それぞれの「個」としての価値を高め、尊重し合うという方向に向かっているのではないでしょうか。
質問2:発信していても反応がありません…

Instagram に限らず、SNS全般において「発信したのに反応がない」という悩みを抱える方は少なくないと思います。
そんな時は一度、「発信とは?」という定義の部分に立ち戻ると良いと思います。
私は発信について次のように定義しています。
「自分の中にある想いを、目に見えるカタチや言葉にして外の世界に出すこと」
届けたい、受け取ってもらいたい。その想いを伝わるように表現する。SNSであれば、文章と写真の力で伝える。
そのためのポイントは2つです。
●あなたにはどんな想いがあるのか?
SNS発信で表現をする前に、あなたにはどんな「伝えたい想い」「表現したい想い」があるのか。
それを明確にすることが最初になります。
先ほどのセールスやマーケティングの話ではありませんが、「商品を売りたいので発信のテクニックを知りたい」という発想だと本末転倒です。
おそらく発信し続けることも難しければ、相手を魅了することも難しいのではと私は感じてしまいます。
●伝えたいことを伝える技術を身につける
何かを誰かに伝えたいのであれば、”表現力” は絶対に磨くべき。
「想い」には良いも悪いもありません。何が重要で、何が好き、というのも受け取った側が決めることです。大切なのは、あなたが「伝えたいこと」に揺るぎない軸があるかどうか、その想いを「伝える」「届ける」表現力があるかどうかということです。
自分の価値観を、「世界観」という目に見えるカタチにして表現し、その「世界観」で誰かを魅了することができるようになれば、必ずあなたの世界は広がります。
●投稿の質を高める2つのクオリティ

最後に、発信や投稿の「質」に対する意味合いについてお話したいと思います。
ひとつは、表現力そのものの「質」です。このクオリティが追いつかなければ、どんなに良い商品やサービスであっても表現しきれず、届けることができないという事態になってしまいます。
もうひとつの「質」は、そこにある「想いやエネルギー」を指します。
表現がイマイチでも伝わりませんし、想いのエネルギーが弱ければそれもまた相手には響きません。
この両方をバランスよく育て、表現できてこその「伝わる発信」です。それも楽しんで続けられなければ意味がありません。
この2つのバランスが見事な事例を、最後にお伝えして終えたいと思います。
「せかほし」から伝わるあの世界観

「世界はほしいモノにあふれてる」というNHKの番組があります。
私のお気に入りの回は、2019年12月12日に放送された「極上のシードル(りんご酒)を探すブルターニュ地方の旅」です。
画面に映し出される美しい光景を眺めながら、「今すぐあの街角でシードルを飲みたい!!!」と恋焦がれていたほどです。
ため息が出るほど美しいリンゴ園にある、石造りの小さな醸造所。こだわりの道具を使って、たった一人で幻のシードルをうみ出す職人さん。彼の飼ってる白くて大きな犬。
映像を通して伝わってくる、モノ以上の価値。
「あー、体験したい!!! あの世界を。あんなふうに大切にうみだされるものを、受け取ってみたい。ひとくち飲んだら、あの美しい風景がきっと脳裏に蘇る。すごく幸せな気持ちになれるはず。」
…想いを伝えるって、こういうコトなんだろうと思います。
美しい映像とともに、テーマごとの何かに関わる人々の「想い」を伝えてくれる「せかほし」。
次は何を紹介してくれるんだろう、どんな世界を魅せてくれるんだろう。そういった期待感が心の中に生まれます。
そして、その対極にあるのが「TVショッピング」です。
商品が素晴らしいのは分かります。本当に優れた機能でいっぱい。びっくり価格のディスカウントも確かにすごい。でも私の感情は、それでは動かない。
でも、どっちが良い、悪いという話ではないんです。
「あなたが何かを伝える立場になるのであれば、どちらを選びたいですか?」という選択です。
私は写真と言葉とデザインで、想いを伝える発信がしたい。
そう思っているんです。