「欲しいモノを形に。」をテーマにブランド展開するneru design works さんから学べること

私が好きなInstagram のアカウントに「neru design works」さんがあります。
感度の高いキャンパーさんたちに愛されているキャンプ用品を扱うブランドですが、私もここに載っている写真を眺めているだけで「すっごく素敵」と見とれてしまいます。
写真がそもそもキレイというのもあるけれど、それと同じぐらい、ものづくりに関するこだわりを感じられるから私の心も動くのだと思います。
ブランドの示す価値が変わった
今回、私の大好きなキャンプ用品を展開するお店をご紹介しながら、私たちはどういう視点で商品を選ぶようになってきているのかというお話をしていきたいと思います。
まず最初に、”0/0” というブランド名で展開している、「neru design works」さんのインスタグラムアカウントを見て欲しいなと思います。
写真を見た瞬間、その世界観がすぐに伝わってきませんか?
インスタグラム内で投稿されているほかの写真も合わせてご覧いただくとよりわかるのですが、質感へのこだわりを随所に感じます。
完成するまでの「モノ作りのプロセス」が散りばめられており、キャプションを読むにつれて、その哲学までもがじんわりと沁みてきます。
私たちはこの時、確かにそこへ「ブランド」を感じるのではないかと思います。
不思議なものでかつてのブランドの価値観とは、希少性や限定性に加え、王室や著名人が使用していることへのステータスなどから付加価値がついてきました。
今回ご紹介している 「neru design works」さんにおいても、希少性という点においては確かに同じです。
海外での大量生産にアンチテーゼを打ち立てるがごとく、Made in Japan にこだわった体制により、希少性がそこに存在しています。
ですが、私たちの心を動かすのはそれだけではありません。たとえば、こちらの投稿をご覧になってください。
「欲しいモノを形に。」
この言葉をテーマに制作をされているということで、まさにその精神がこちらの投稿からも感じ取れます。
市販のものでは困る人が出てくるはず。数は少ないかもしれないけれど、こういうのがあったら欲しいな、というキャンパーの願いを叶える姿勢が貫かれています。
使い手にとって良いものを作ろうという哲学が、作り手のメッセージ一つひとつに込められている。それによってブランドが作られています。
よく意外に思われますが、私はブランドが好きです。
そこには商品の品質の良さや安全性、ステータスとなる付加価値とは別に、作り手の「こだわりの精神」が宿っているからです。
価値共感で選ばれるブランドはどう作られる?
同じ素材であっても、一枚一枚の写真が工夫されて撮影されている「neru design works」さんの作品。
自然の中に置いたり、並べて置いたり、時には小さなモデルさんを使って撮影するなどのていねいなこだわりを感じます。
マーケティングや販売戦略というものが、これまでは企業の成長要因として大きな割合を占めていましたが、これからはブランドによる「共感価値」で選ばれることが主流になるのではないかと思います。
「ブランディングって言うけれど、それで売上はどうなの?」
という質問があったとしたら、
「そこにブランドがないから、マーケティングに頼らざるを得ないのでは?」
と、とんちのように返せる世界がもう、すぐそばにある気がします。
ここからはそんなブランド作りをどのように写真やデザインを通して実現していくのかという、私なりの見解をお伝えしていきたいと思います。
① 使い手の目的を叶える
使い手にとっての「上質世界」を叶えるための存在であることが、ブランドの重要な要素のひとつではないでしょうか。
使い勝手や安全性などの機能的なことはもとより、その人にとってより上質な体験をもたらしてくれる存在。
キャンプ道具で言えば、例えば鍋ひとつにしてもいろんな価値があって、耐久性、デザイン性、機能性など、その価値はいくつかに分類されます。すべてを叶えてくれることが理想だとしても、ときにはそれが叶わないこともあります。
耐久性に優れていて、デザインもとても美しいけれど重くて持ち運びには不便、とか。それでも選んでしまうのは、誰にとっての「上質」を考え抜いているのだと思います。
②愛着がわくような体験
やっぱり見た目が美しくないと。
私はそんなふうに考えます。だって、見た目がキレイなものを使うと純粋に嬉しいですよね。
そこから愛着がわいてきますし、それを使うことでなんだか自分自身の価値まで上がるような気がしてきます。
そしてもちろんそれは見た目だけの表面的な美しさではなく、大切にしたい価値観、美意識から生まれる喜びなんです。
③売りたい感を見せない提案
Apple が値下げキャンペーンを大々的におこなっていたらどうですか?
ルイ・ヴィトンがECサイトで購入者レビューや売れ筋ランキングを出していたらどうですか?
売りたいという気持ちを全面に出すということは、守っていきたいブランドも、伝えていきたい哲学も、どちらも粗末に扱うことにつながる気がしています。
だからこそ、ブランドは中長期で育てていくものなのだと思うのです。
発信を通してブランドをどう伝えるか
ブランドは、自分だけの想いだけで作られるものでもなければ、お客様のニーズへお応えする中で生まれるものでもありません。
ブランドは、人と企業がコミュニケーションをしていく営みから生まれるもの。その中にはSNSでの発信も含まれます。
誰でも初めは、自分の想いや哲学、ビジョンを表現できるようになるところからスタートさせます。
それは文字であっても写真であっても同じです。
これを自己表現ベースの「アート的な発信」と考えるのであれば、ブランド作りはお客様との対話から生まれる「デザイン的な発信」といえます。
デザインは、目的を持って生まれてきます。キャンプで考えるのであれば、まさにそれは「使い勝手」の一言に集約されるかもしれません。
その目的を達成するための手段としてデザインは存在し、ブランドを作る発信の前提になってきます。
「neru design works」さんが掲げるテーマ、「欲しいモノを形に。」はどのようにデザインされ、私たちとの間にブランドを育んできたのか?
そういう視点でインスタグラムを見るようになると、またちょっと面白いと思いませんか?